「知床」――この地に行ったことがない人でも、この名前にどこか懐かしさを感じる人もいるのではないだろうか。実は「知床」は、“大地の果て、大地の突き出たところ”を意味するアイヌ語、“shir etok (シレトク)”に由来している。
名前の通り、北海道の東部からオホーツク海に長く突き出た半島だが、一つの半島内で多様な自然環境に接することができる“特別な場所”になっている。
知床半島は斜里町と羅臼町にまたがり、その中心を 1,200m ~ 1,600m 級の壮大な山々が背骨のように貫いている。知床五湖や、滝自体が天然の温泉になっているカムイワッカの滝をはじめ、数々の湖や滝があり、70 本近い川が流れる。火山地帯には温泉地があり、歌で有名な知床岬、岩が怪獣の形をしているゴジラ岩など、ユニークな観光スポットがたくさんある。
さらに、知床半島には北海道でも数少なくなった、野生の動植物が多数生息している。海から山へと続く急峻な地形には、ヒグマやエゾシカ、キタキツネたち、そして、海岸草原から高山までの植物相を一挙に見ることができる。
海にはアザラシやイルカ、クジラたちが訪れ、川ではサケやマスが泳ぐ。オオワシのような世界的に希少な渡り鳥が見られるほか、シマフクロウやシレトコスミレなどの絶滅危惧種も生息している。
知床の多様な自然環境が、こうした生物の多様性を支えているのだ。
知床は、北半球でもっとも低い緯度で、流氷が見られる場所としても知られている。冬の季節にはるばると流れ着く流氷は海を覆う白銀の風景を織りなすだけでなく、食物連鎖の起点となる植物プランクトンが増殖しやすい環境をつくりだし、知床を“宝の海”にしているのだ。その恩恵は、巡り巡って、海から陸へとつながる命の循環となり、知床半島全体の生態系を支えている。
そして、その生態系を支えるものの中には、この土地で暮らす人達も含まれている。知床の自然を乱開発や環境破壊から守るためには、人の手による助けも必要不可欠となっているからだ。そういう意味では、人間と自然が共存する豊かな大地を目指し、日々努力が続けられている、“特別な場所”ともいえるのだ。
海から陸へとつながる生態系がわかりやすく見られること、希少な動植物の生息地となっていること、そしてこれらを保全していくための管理体制が整っていること。これらの評価により、知床は日本で 3 例目の世界自然遺産登録地となり、以来、世界から注目される存在となっている。
最新のニュースから、おもしろ動画、気になる有名人や友達の近況など、今、この瞬間も世界中で大勢の人が Web を通して世界の情報とつながっている。パソコンを起動したら、まっさきに Web ブラウザ (閲覧ソフト) を起動して、電源を切るまで、立ち上げっぱなしという人も少なくないはずだ。
今や Web ブラウザは、インターネットを使うのになくてはならない存在。それだけに、どんなパソコンにも最初からついている。でも、出てきた料理をそのまま食べずに、塩・胡椒や薬味で、自分の味に変えるのと同じで、Web ブラウザもパソコン付属のものではなく、自分のテイストにあったものに変えて使っている人も多い。
そういった人達の間で、Firefox はダントツの人気を誇っている。選ばれる理由は様々だが、Web ページの表示が速い、セキュリティ対応が早いといった基本的なポイントに加え、見た目を自由に模様替えができたり、Web の活用スタイルにあった便利な機能をトッピングできる点がいいという人も多い。
Firefox の柔軟性が、多様なユーザの好みに応えているのだ。
基本機能の充実や、柔軟性のあるつくりが高い評価を得て、今では世界中でインターネットにアクセスする人の 4 人に 1 人が Firefox を使っている。(※1)
さらに、こうして Firefox が人気を伸ばしているもう 1 つの理由としてあげられるのが、開発者の顔が見える Web ブラウザという点だろう。
最近ではどの Web ブラウザも、ある程度は内部技術が公開されているが、まだまだ秘密の部分が少なくない。例えば入力した情報が本当に安全に扱われているかや、過ってあやしいサイトを開いたとき、何が起きるかわからないこともある。これは、言うなれば、どんな材料が使われ、どうつくられたか想像もつかない未知の料理に挑戦するようなもの。たしかに、それでもいいという人はいるかもしれない。だが、Firefox はつくられ方がちょっと違う。産直野菜の料理のように、作り手の顔が見え、さらには素材、製法、ついでに問題点までもすべて包み隠さず明かされているのだ。問題に対する対応も早く、だからこそ安心して使える、という声が世界中から数多く寄せられている。
実は Firefox をつくっているのは営利企業ではない。普通のソフトウェアは、ほとんどが企業の社員だけというクローズドな環境のもとで製品の開発が行われているが、Firefox の開発は少々異なる。Web の世界をよくしたいと願う人々が、インターネットを通して技術や情熱を結集して開発を行なうオープンソースというスタイルを採用している。開発の進行状況やバグの対応といった、プロジェクトに関する情報はすべてネット上に公開されていて、透明性を保っていることも世界中で人気を得ている理由のひとつであろう。
こんな特別な方法で作られている Firefox は、各バージョンの開発時にコードネームが付けられる。そして、Firefox 3.5 には、日本が誇る世界自然遺産登録地である「Shiretoko」の名が冠されていたのだった。
1 2010 年 4 月現在、米 Net Applications 調べ。